やすの銭湯日記

2002年4月19日
旭湯

目黒区下目黒2-16-13

久々に東急目黒線に乗る用事ができたので、帰り道の途中、不動前駅で降りることにした。もちろん銭湯めぐりのためである。

学生の頃、当時の目蒲線沿線に住んでいたのでこのあたりはよく歩いたりしていた地域である。懐かしさを感じながらぶらぶらと進むと山手通りに出た。交通量が非常に多いこの通りの喧騒を忘れさせてくれるためにあるような感じの銭湯が本日の銭湯「旭湯」だ。目黒不動の交差点を入るとすぐに煙突が見えてくる。

正面から見た伝統的な外観から想像できる通り、中も東京の典型的な造りである。高い番台に入浴料四百円を払う。脱衣場は有線放送やテレビの音などがいっさいなく、しんとしている。この独特な雰囲気には本当にいやされる思いがする。外とはまさに別世界である。

浴室には島カランが一つ。ここについている鏡は微妙に傾斜がついていて、若干上向きになっている。座ったときに見やすくなるような工夫なのだが、鏡に映る浴室内の風景がさらに斜めになるため、平衡感覚が失われそうになる。垂直に立っている鏡に見慣れているせいなのだろうが、なんだか変な感じである。

髪と体を洗ったら湯舟へ。まず最初に見てしまうのが、湯舟横にある水槽である。壁に埋め込まれた形で、中では金魚が数匹泳いでいる。金魚と一緒に湯に浸かるというのはなかなかおつなものである。湯舟を泳いでいたらもっとすごいのだが、さすがにそんなことはあり得ない。

背景画のペンキ絵は富士山なのだが、その下側に注意書きがある。「熱い湯隣りで身体をならしてから入りましょう」。湯舟が二つに分かれていて、そのうちの小さくて深い方が温度が高いということのようだ。入ってみたら確かに大きい湯舟よりは熱いが、それでも東京の銭湯としてはまだまだ熱いとは言えない気がする。そして、反対の端には「この辺りが一番ぬるくなっています」とある。几帳面な注意書きが微笑ましい。

浴室も控え目な泡風呂の音と、女湯から聞こえる話し声、そして体を洗う音以外はまったくせず、静かである。まさにこれがこの銭湯の売りと言えるであろう。

脱衣場に戻り、外を見ると庭には池があった。そして池ではもちろん金魚が泳いでいるのであった。



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